「建設リーダーズ — 建設業の未来を語る」 自由民主党 見坂茂範氏インタビュー 〜『元技官の建設行政のプロが政治の世界へ挑む理由・見坂茂範氏が語る業界の未来』〜

目次
「建設リーダーズ ー 建設業の未来を語る」とは、建設業界の課題や展望について、業界の有識者をお迎えし、助太刀総研所長である北川がお話しを伺う企画となります。
第二回目は、自由民主党の見坂茂範氏にお話をお伺いしました。

<プロフィール> 見坂茂範 自由民主党
国土交通省では主に道路行政に携わり、道路公団民営化や公共事業の品質確保、建設DXの推進、建設現場の賃金アップ施策にもご尽力。その後、京都国道事務所長、福岡県県土整備部長、関東地方整備局企画部長、大臣官房技術調査課長、2023年には近畿地方整備局長などを歴任。
2024年1月の能登半島地震では、近畿地方整備局長として災害対応を指揮。2024年5月に同職を退任。

<プロフィール> 北川 憲二郎 助太刀総研所長
ゴールドマンサックス証券、ドイツ証券、シティグループ証券等を経て2024年4月当社取締役CFO就任し、ファイナンス、経営戦略業務等を推進。
また、助太刀総研所長として、外部の有識者及び第三者機関と共に建設業界の実態調査や働き方に関するフォーラムを実施。
〜アイスブレイク〜
北川:本日はご多忙な中、貴重なお時間をいただきありがとうございます。全国を飛び回られているとお聞きしておりましたので、この後もご予定はございますか?
見坂:こちらこそ、お時間いただきありがとうございます。本日は記者の共同インタビューが控えております。実はここ数ヶ月、ほとんど日中は東京におらず、全国の地方都市を訪問しておりました。まずは自分の名前を知っていただくことが重要だと考えております。ポスターやリーフレットだけでなく、私自身の人柄や話し方も直接知ってもらうよう心がけております。
北川:ご経歴を拝見いたしますと、素晴らしいご経歴ですよね。確かに、少しお堅い印象を持たれるかもしれませんが、お会いするととても気さくでいらっしゃいますよね。いい意味で役人っぽさは感じません。
見坂:ありがとうございます。実際によく「話しやすい」「役所の方のような堅さがない」と言っていただくことは多いです。

見坂さんの生い立ち
〜土木職人の父の背中を見て建設業界の道を志す〜
北川:まず始めに、見坂さんの生い立ちについてお聞きしてもよろしいでしょうか?
見坂:私は兵庫県多可郡多可町の出身です。地元の基幹産業は建設業で、父も町の建設会社で土木職人をしておりました。父は現場が本当に好きで、晴れていれば土日祝日も関係なく現場に出ていましたし、雨でも現場の様子が心配でよく見に行っていました。
そんな父の背中を見て育ち、私自身も建設業界で活躍したいと思うようになりました。高校卒業後は土木工学科に進み、いずれはもっと大きなスケールで、地図に残るような仕事がしたいという思いから建設省(現・国土交通省)に入省しました。
約30年間、主に道路行政に携わり、京都の国道事務所長、関東地方整備局の企画部長、大臣官房の技術調査課長、近畿地方整備局の局長などを歴任。昨年5月に退官しました。
政治に関心を持ったきっかけとは
〜「何とか現場の方々の役に立ちたい」という思いが常に原動力〜
北川:長らく行政でのご経験を積まれてきたなかで、政治の世界に関心を持たれたきっかけは何でしょうか?
見坂:自分自身も建設業界の様々な課題を行政側から解決しようと努力してきました。しかし、どうしても限界を感じることも多く、やはり政治の力でなければできないことがあると痛感しました。
幼いころから現場で頑張る父や職人さんたちの姿を見て育ち、「何とか現場の方々の役に立ちたい」という思いが常に原動力となっています。これからは政治の場で、より一層現場の皆さんの力になりたいと考えています。
北川:「現場の方々の役に立ちたい」というのは素晴らしい原動力だと思います。
時間外労働の上限規制や4週8閉所の導入、公共工事の設計労務単価引き上げなど、建設業界での働き方の改善に向けた取り組みが進んでいる一方で、助太刀のユーザーアンケートでは、現場の職人さんは「給料が増えてない」「休みが増えていない」、つまり処遇が改善されていないという結果が出ています。
全国各地で現場の生の声を直接聞かれていると思いますが、特に印象的だった意見や新たな発見はありましたか?
見坂:やはり行政には「本音」を言いづらい一面があるようです。ただ、私は建設産業の代表ということもあり、現場の方から率直なご意見を色々伺っております。中でも「人手不足」と「給料をしっかり上げてほしい」という声は本当に多いですね。
昭和30〜40年代の高度経済成長期には、職人さんの地位や給与も高く、非常に誇りを持てる仕事だったという話も伺いました。あの頃の良き時代に少しでも近づけるよう、努力したいと思っています。

3つの政策について
〜『防災・減災・国土強靭化』『経済成長につながるインフラ整備』『持続可能な建設産業へ』〜
北川:現在の建設業界は「職人の高齢化」や「人手不足」など様々な課題が深刻になっています。見坂さんはどのように建設産業を立て直していこうとお考えでしょうか?
見坂:私の主な政策として3本掲げております。
1つ目は『防災・減災・国土強靭化』です。日本全国どこでも災害のリスクがありますので、しっかりお金を投じて備えることが重要だと考えます。私自身も福岡県庁に出向していた時、豪雨災害を3年連続で経験しました。しかし、復旧・強化工事をしっかりと行った場所ではその後大きな被害が出ていません。より確かな効果を感じました。
2つ目は『経済成長につながるインフラ整備』です。失われた30年はまさにインフラ投資を怠った結果であると考えます。新しい道路や橋の整備といった公共投資は民間投資の呼び水になり、経済の好循環を生み出します。実際に大阪では万博をきっかけに活気が生まれています。政治の力で景気の流れを作れるようにしていきたいと思います。
3つ目が『持続可能な建設産業へ』です。地方ほど人手不足は深刻となっています。若い方々に建設業界を選んでいただくためには、やはり賃金の底上げが必要であります。安定した仕事量の確保と、しっかり賃金が上がるサイクルをつくることが、大切だと考えています。
北川:3本とも素晴らしい政策だと思います。
実際、現場からも「もっと賃金を上げてほしい」「自分の時間も大切にしたい」という声が多く挙げられております。若い方は特に、働き方や教育のデジタル化にも期待を寄せておりますが、DX化についてはいかがお考えでしょうか?
見坂:DX化はどんどん進めていくべきです。特に現場のICT化だけでなく、書類作成といったバックオフィス業務もDX化で効率化する必要があると思います。実際、現場から戻ってきてオフィスでの資料作成等で残業が増えているという声も聞きます。
現場でデータの打ち込みができ、戻ってきたら書類やレポート・数量計算が出来上がってるなど、現場の方の負担を減らすことも大切です。人手不足がますます深刻になる中で、少しでも業務負担を軽減できるような仕組みづくりを進めていきたいと考えています。

建設業界の今後
〜一番大切なのは「現場の職人さん」〜
北川:弊社のサービス(『助太刀』)は建設技能者を中心に現在21万超の方々に登録いただいています。最後に、見坂さんより、これらの建設現場に直接携わっている皆さんへのメッセージをお聞かせください。
見坂:全国の中小建設事業所をまわっていると、今後の建設業界で必要なことは2つであると考えます。まずは『安定した仕事量がなければ会社経営が成り立たないということ』です。
公共事業の予算確保は政治の大きな役割です。災害発生時だけでなく、普段から仕事がある体制を整えることで、会社も安心して経営でき、急な災害にも柔軟に対応できる環境が作れると考えております。
北川:確かに経営の安定には、やはり日々の受注確保が不可欠ですね。
見坂:それともう一つは、「処遇の改善」も非常に重要であります。若い方に夢を持って業界へ入っていただくためには、まず賃金をしっかり上げること、そこが希望の源となります。
休暇も大切だと思いますが、地域性や個々の事情に合わせ、柔軟な働き方の選択肢を設けることもいいのではないかと考えています。
北川:欧米やヨーロッパなどはインフラ投資で国力を高めている例が多いです。日本もそうした長期ビジョンを持つことは大切ですよね。
見坂:おっしゃる通りです。10年後、20年後を見据えた国づくりを行うため、ビジョンを持った政治家が必要ですし、その国土を担うのはやはり”建設業界である”と私は考えています。
北川:日本の建設業界をもっと魅力的な仕事にして、しっかり稼げる業界に戻すことが、これからの日本にとっても重要ですね。
見坂:やはり一番大切なのは「現場の職人さん」です。設備、内装、型枠、鉄筋など、現場のさまざまな職種の職人さんがいなければ工事現場は一歩も進みません。現場の職人さんがいきいきと仕事に取り組めて、十分な人数を確保することが、日本の建設産業を支える根幹です。専門工事業や中小事業の方々にしっかり焦点をあてた政策を進めてまいります。

〜おわりに〜
今回のインタビューを通じて、見坂さんの建設業界に対する熱い想い、そして業界が直面する課題と展望について、貴重なお話を伺いました。
特に「現場で働く職人さんが主役」という考えは、建設業界が持続的に成長していくための原点だと再認識しました。業界全体が魅力的で安心して働ける環境を整え、次世代へとバトンをつないでいくためにも、私たち自身も現場の声を大切にしていきたいと思います。
助太刀総研では、今後も建設業界に係る様々なテーマを取り上げてご紹介しますので、引き続きよろしくお願いします!