【2024/9/17-20】労務費の基準について議論を開始。中央建設業審議会が労務費の基準に関するワーキンググループを開催
労務費の基準について議論を開始
国土交通省は労務費の基準について議論を開始、中央建設業審議会にて労務費の基準に関するワーキンググループを開催したと公表しました。
2024年9月10日霞が関にて、中央建設業審議会に専門のワーキンググループを設置し、改正建設業法の内容を踏まえ労務費の基準について議論を開始するとして第1回が開催されました。当日の配布資料についても公開がされています。
当日のアジェンダは以下です。
- 労務費の基準に関する経緯
- 労務費の基準に関する主要な論点に対する考え方
- 今後の検討の進め方について
それぞれ資料を引用しながら簡単に解説していきます。
1.労務費の基準に関する経緯
担い手3法の改正により、「1.労働者の処遇改善」「2.資材高騰に伴う労務費へのしわ寄せ防止」「3.働き方改革と生産性向上」に取り組むことが法制により義務化、明文化されました。
技能者の入職や持続可能な就労環境のために賃金の引上げが必要とするなかで、建設工事の請負契約は以下のような課題を抱えているとされています
- 労務費(賃金の原資)の 相場が分かりづらい
- 材料費よりも削減が容易
- 技能者の処遇を考慮せず安価に請け負う業者が競争上有利
- 過度な重層下請構造のため技能者を雇用する下請業者まで適切に確保されづらい
これを改善するために、労働者の処遇確保を努力義務化するとともに、中央建設業審議会が「適正な労務費の基準」を作成し、これを著しく下回る見積もり・契約締結を禁止することとなりました。
2.労務費の基準に関する主要な論点に対する考え方
労務費の基準検討にあたって考慮すべき事項として基本方針、論点が示されています
これまでの委員会で議論されてきた大方針は以下のようなものでした
- 「適正な工事実施のために計上されるべき標準的な労務費」を「中長期的にも持続可能な水準で設定」すること
- 「請負契約締結の際に労務費の相場観を与える役割」をもたせること
- 「廉売行為を規制するに当たっての参考指標」としても用いること
これらをより具体化し、基本方針について議論の方向性を確認したようです。
例としては、適正な水準の労務費が、公共/民間に関わらずすべての段階において確保され、技能労働者の賃金としていきわたることや、実施状況の調査に加え指導や勧告公表などの規制的手法も利用しながらルールの定着を図ること、中小事業者や一人親方でも使いやすく、細分化しすぎないことなどが挙げられています。
3.今後の検討の進め方について
今後はおよそ1年〜1年半をかけて検討を進めていくようです。
おおよそのスケジュールは以下の通りです
まとめ
これから約1年半をかけて議論され標準労務費が作成されていきます。
建設業は業種が細かく分かれ、その中でも工事種別も異なっておりすべてを細分化して設定することは難しい特徴があります。
しかし細分化しすぎても実際に活用するには適用難易度が高かったり、小規模事業者にはわかりにくいなどが有り得そうです。
事業経営の観点からも金額には調整する幅をもたせる必要もありかなり高度なバランスが必要そうです。
合わせて技能者のスキルや能力、実績などを可視化しておかないと、標準単価に対して技術者の評価ができないということありそうだと考えると、今回の標準労務費の議論進捗を注視しつつ自社の職人や取引先の評価、育成、適正な賃金・価格の形成に早めに取り組んでおく必要があるのではと思います。
助太刀総研 運営事務局
Sukedachi Research Institute