日本における外国人労働者:特定技能/技能実習/育成就労の違いについて理解する(前編)

現在、日本で活躍している外国人労働者は、約200万人(2023年10月末時点)になっております。そのうち、建設業は約14万人で、全産業の7.1%となっています。

外国人労働者の受け入れ方として思い浮かぶのが「特定技能」と「技能実習」ですが、両者は混同されて捉えられることもありますが、中身は別物です。「特定技能」と「技能実習」は、それぞれ目的や求める技能水準などの違いがあります。
今回は「特定技能」と「技能実習」の違いを比較しながら、説明していきます。
<特定技能と技能実習の比較>
「特定技能」と「技能実習」の違いを表にまとめると以下のようになります。

いくつか詳しく解説していきます。
①目的
・特定技能の目的は、人材確保が難しい産業で一定の専門性・技能を有する外国人を受け入れて日本の人材不足の解消を目的としています。
・技能実習の目的は、日本の高い技術を習得してもらい、母国で広めてもらうための国際貢献を目的としています。
②職種
・特定技能では、以下の16分野で受け入れが可能です。
(介護、ビルクリーニング、工業製品製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、自動車運送業、鉄道、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業、林業、木材産業)
・技能実習では、以下画像のように、91職種(167作業)の受け入れが可能です。

③転籍・転職
・特定技能は、目的が労働であるため「共通分野」または「技能評価試験や日本語試験4級に合格」などの条件を満たしている場合は転職可能です。
・技能実習は、目的が実習であるため、転職という概念は存在しない。そのため、原則不可となります。
④在籍期間
・特定技能は、1号については在留資格を更新することで在留期間を5年まで延長可能。また、2号へ移行することで無制限の滞在が可能になります。
・技能実習は、それぞれに在留期間が変わっており、最大5年まで在留可能。
目的はあくまで、日本で技術を習得し母国で広めてもらうための国際貢献のため、無制限の滞在ができないようになっているようです。
⑤受け入れ人数
・特定技能では、目的が人材不足の解消のため、受け入れ人数制限はありません。ただし、介護と建設分野は「常勤職員の人数まで」などの制限が設けられています。
・技能実習では、目的が技術を母国に持ち帰ってもらうことのため、適切な指導が受けられるようにあえて人数制限が設けられています。
<メリットとデメリット>
それぞれのメリットとデメリットについては、以下が想定されます。
【特定技能】
<メリット>
①:受け入れ人数の制限がない(介護・建設除く)
②:技術や日本語能力が高い
③:早期での入社が可能 ➡︎ 国内在住者を雇用できるため
<デメリット>
①:転職の可能性がある
②:会社都合の退職者がいると受け入れの申請不可
③:人材確保が比較的難しい
【技能実習】
<メリット>
①:関係構築ができる(転職できない)
②:人材確保が比較的簡単
<デメリット>
①:入社までに時間がかかる ➡︎ 国外からの呼び寄せのため
②:作業内容に一部制限がある
③:未経験かつ日本語能力が低いため、育成が必要
<まとめ>
日本国内で人手不足は大きな課題となっております。そのため、外国人労働者の需要は高まりつつあります。厚生労働省の令和5年10月末時点の外国人雇用についての届出状況によると、2023年の産業別外国人労働者数の対前年増加率は「建設業」が24.1%となっています。日本社会を維持していくためにも、外国人労働者の受け入れが進められているようです。
また、2024年6月に技能実習に代わる新たな制度「育成就労」を新設するための関連法の改正が、国会で可決・成立されました。(詳細は次回のレポートにまとめる予定です)
建設業の人手不足の解消に向けて、政府や地方自治体としても補助金や助成金などの支援を行っております。助太刀総研としても、「建設現場を魅力ある職場に」できるよう、引き続き調査・研究や情報発信をしていければと考えております。
<参考>
・「外国人雇用状況」の届出状況まとめ【本文】 (令和5年 10 月末時点)|厚生労働省
・外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組|出入国在留管理庁
・技能実習制度 移行対象職種・作業一覧|厚生労働省

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