【京都大学 × 助太刀総研 共同研究】技能労働者の稼働状況に関する実態調査

助太刀総合研究所は、京都大学 金多・西野研究室と共同で建設業の技能労働者の稼働状況について実態調査を行いましたのでその結果を公開いたします。
調査概要

調査結果
働き方改革関連法による時間外労働の上限規制は、労働者の健康維持と生活の質向上を目的としています。しかし、長時間労働が常態化してきた建設業界においては、本規制が技能労働者の働き方や収入にどのような影響を与えているのか、十分な実態把握が求められてきました。労働時間の短縮は収入の減少につながり得るため、従来の生活水準を維持することが難しくなる懸念があります。この課題を克服するためには、単位時間あたりの生産性向上や稼働率の改善が必要とされます。
さらに、この規制の影響は雇用形態によって異なると考えられます。本調査研究では、時間外労働の上限規制が技能労働者に及ぼす「収入の変化」「働き方の変化」「工期の変化」を明らかにするとともに、労働に対する価値観を検証し、理想と現状のギャップを浮き彫りにすることを目的としました。
アンケート調査の結果
アンケート調査の結果を、「労働時間について」「労働日数(休日数)について」「収入の変化について」の3つの観点からまとめました。
「労働時間について」
労働時間・労働日数が減少したと回答した層が約15〜20%占める
調査前の仮説では、時間外労働の上限規制の適用によって労働時間は減少しているのではないかと予想していました。実際には、回答者の約15%が「労働時間が短くなった」と答えた一方で、最も多かった回答は「変わらない」であり、全体の約78%を占めました。
さらに、約7%は「労働時間が長くなった」あるいは「とても長くなった」と回答しており、労働時間の変化にはばらつきが見られ、必ずしも一律の短縮傾向とは言えない状況が明らかになりました。(図1)

雇用形態別にみると、会社従業員は短縮傾向がみられる一方、一人親方の中には長時間化を示す回答も見受けられました。職種別では、躯体工事、土木工事、施工管理といった会社従業員の比率が高い職種で20%以上が「短くなった」と答えたのに対し、内装工事や電気工事のように一人親方の多い職種では労働時間が延びる傾向が確認されました。
また、季節的な変動も顕著であり、繁忙期には特に経営者や個人事業主を中心に労働時間が増加し、閑散期には大幅に短縮される傾向が強く見られました。
「労働日数(休日数)について」
労働日数については「減少した」と回答した割合が約19%にとどまり、全体の大半は「変わらない」と答えています。(図2)

ただし、繁忙期には経営者や個人事業主を中心に休日が減少し、逆に閑散期には休日が増加する傾向が確認されました。職種別では躯体工事において休日減少の回答が約25%と最も多く、雇用形態との関連が示唆されました。
「収入の変化について」
月収が減少した回答者が25%以上となる(ただし、日給減少者は12%に留まる)
収入の変化について分析すると、月収が減少したと回答した割合は25%以上にのぼりました。(図3)

一方で、日給が減少した割合は約12%にとどまっており、月収と日給の間で異なる傾向が見られました。労働時間と月収がともに減少した割合は約25%、労働日数と収入がともに減少した割合は約43%に達しており、労働日数の変化が収入に影響を与えている可能性が示唆されました。
また、年収が低い層ほど月収が減少した割合が高い傾向にありました。ただし、日給が減少しても年収が増加しているケースも一部に見られ、別の方法で収入を補っている可能性が考えられます。
収入を減らしてまで休日を確保したい?現場に聞く本音と価値観
「収入を減らしてまで休日を増やしたいか」という設問に対しては、「週1日で十分」「収入を優先したい」と回答した割合が約40%を占めました。
一方で、「収入が下がっても週休2日を確保したい」と回答した割合は約50%となりました。結果として、多くの技能労働者は収入維持を優先する姿勢を示しており、休日の確保よりも生活基盤の安定を重視する傾向がうかがえました。(図4)

インタビュー調査の結果
アンケートにおいて「労働時間・労働日数が増加した」と回答した層や、「休日より収入を重視する」と回答した20〜30代の若年層に対して追加のインタビューを行いました。
時間増加の理由としては、「収入を上げようとすると労働日数や時間が必然的に増える」「稼ぎたいので積極的に仕事を受注している」「業務量が増えているのに、時間の制限により融通が効かない」「人手不足により、一人あたりの負担が増えている」といった声が聞かれました。(図5)

また、若年層における「休日より収入を優先する理由」としては、「お金がいらない人はいない、一人親方や中小企業では特に必要」「実家暮らしに比べ、上京している人は稼がないと生活できない」「土曜日も働ける環境はむしろありがたい」といった意見が挙げられました。(図6・7)


まとめ
本調査は、時間外労働の上限規制が建設業の技能労働者に与える影響について、実態データをもとに整理したものです。その結果、労働時間や労働日数、収入への影響は雇用形態や職種によって異なり、一様ではない実態が明らかとなりました。
特に、労働時間・労働日数と収入が密接に関連している構造の中で、収入の維持を重視する声が多いことは、制度運用を考える上で重要な論点であるといえます。
今後は、労働環境の改善と安定的な収入確保をどのように両立させるかについて、職種特性や働き方の多様性を踏まえた検討が求められると考えられます。
調査報告書全文

助太刀総研 運営事務局
Sukedachi Research Institute