レポート

【開催レポート】第1回 建設業働き方研究会

2025年11月26日(水)、建設業界の持続的な発展と働き方改革の推進を目的とした「第1回 建設業働き方研究会(主催:助太刀総研)」を開催いたしました。

本研究会は完全招待制で実施され、スーパーゼネコンをはじめとする主要建設企業・団体から31名が参加しました。第1回は、国土交通省より伊勢尚史参事官をお招きし、「労務費に関する基準(標準労務費)」の導入プロセスとその実効性確保をテーマに、官民一体となった熱量の高い議論が交わされました。

開催概要

開催日

2025年11月26日(水)

場所

京王プラザホテル

主催

助太刀総研

登壇者

国土交通省 大臣官房参事官(建設人材・資材) 伊勢 尚史様

テーマ

標準労務費導入までの道のりと、実効性の確保策について

■ 参加企業・団体(順不同)

株式会社大林組、大成建設株式会社、清水建設株式会社、株式会社竹中工務店、戸田建設株式会社、西松建設株式会社、株式会社鴻池組、株式会社熊谷組、株式会社フジタ、飛島建設株式会社、鉄建建設株式会社、東洋建設株式会社、髙松建設株式会社、株式会社竹中土木、株式会社関電工、新日本空調株式会社、株式会社大気社、株式会社乃村工藝社、株式会社一条工務店、旭化成ホームズ株式会社(計31名参加)


基調講演:労務費に関する基準制度について

伊勢参事官より、「担い手三法」改正に伴う新たな枠組みと、ワーキンググループ等で検討されている「労務費に関する基準(標準労務費)」の策定プロセスについてご講演いただきました。

講演のポイント

  • 「実効性」への注力
    • 単に基準値を決定するだけでなく、「いかにして賃金を技能者まで行き渡らせるか」という制度の実効性確保が最大の焦点であると強調されました。
  • 価格交渉の可視化とGメンによる調査
    • 実効性を担保するため、発注者や元請間での価格交渉の経緯(ビフォーアフター)を示す見積書の長期保存が義務付けられることとなりました。
  • 不適正な支払の監視体制
    • 制度の出口戦略として、CCUS(建設キャリアアップシステム)のレベル別年収を下回る企業を重点調査対象とするなど、賃金情報を起点に労務費ダンピングを未然に防ぐチェック体制の導入について説明がありました。

国土交通省 大臣官房参事官(建設人材・資材) 伊勢 尚史 様


質疑応答・ディスカッション

講演を受け、参加各社からは実務運用を見据えた質問や意見が相次ぎました。

<主な質疑内容>
① 既存契約への経過措置と価格転嫁
 施行前に契約済みの案件(労務費未考慮)について、下請けへの適正支払を行う際に元請けが負うコスト負担をどう考えるか、また発注者への価格転嫁が困難な場合の行政による「斟酌(考慮)」の範囲について、具体的な確認が行われました。

② 法的義務と努力義務の線引き
 「内訳明示の見積書交付」は努力義務とされる一方、「著しく低い労務費の提示」は強行義務違反となります。この境界線について、実務上どのように判断すべきか、明確な指針を求める声が上がりました。

③ システム改修と運用サポート
 新制度対応に伴い、各社で見積・契約システムの大規模改修が必須となります。これに対し、行政側からの運用ガイドラインの提示や猶予期間の設定など、実務的なサポートを望む意見が出されました。

④ 専門工事業者の期待
 「労務費が固定化されることで、価格競争ではなく技術力や動員力で選定される時代になる」という期待感が示される一方、若手確保のためには元請け企業の強いリーダーシップによる制度定着が不可欠であるとの意見が出されました。


総評・今後の展望

会の締めくくりとして、株式会社助太刀 社外取締役の木村より総評が述べられました。

「目的は『数字合わせ』ではなく『人材確保』である」
 
今夏の最低賃金改定時のような、数字ありきの競争に陥ってはなりません。本制度の真の目的は、若手入職者の確保、人材流出の防止、そして技能者の処遇改善であることを常に忘れないことが重要です。

「運用支援と交渉力の強化」
 
制度の実効性を高めるためには、行政による受発注システムの運用支援(中小企業庁の下請法支援のようなモデル)が求められます。同時に、下請・専門工事業者が適正な労務費を主張できる「交渉力」をつけるための支援も、広義の運用支援として必要になるでしょう。

「現場へのメッセージ発信」
 
この画期的な制度を、実際に現場で働く技能者の方々に届けることも重要です。「国や業界が、これだけ踏み込んで処遇改善に動いている」という事実は、現場の士気を高め、人材確保にも直結します。

株式会社助太刀 社外取締役 木村 実


助太刀総研 運営事務局

Sukedachi Research Institute

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  1. (例1)出所:助太刀総合研究所 【2023年度】助太刀総研 建設業実態調査結果について
  2. (例2)【2023年度】助太刀総研 建設業実態調査結果について
  3. (例3)助太刀