中央建設業審議会が第2回労務費の基準に関するワーキンググループを開催
第2回労務費の基準に関するワーキンググループを開催
国土交通省の中央建設業審議会は、2024年11月6日に「第2回労務費の基準に関するワーキンググループ」を開催しました。
※「労務費の基準に関するワーキンググループ」は改正建設業法(令和6年9月施工)の内容を踏まえ、建設工事の労務費に関する基準作成を目的としております。
当日の配布資料についても公開がされています。
当日のアジェンダは以下となります。
- 労務費の基準の実効性確保について
- 労務費の基準の作成について
それぞれ資料を引用しながら簡単に解説していきます。
これまでの議論内容(第1回ワーキンググループの内容)
技能者の入職や持続可能な就労環境のために賃金の引上げが必要となる中、建設工事の請負契約は以下のような課題を抱えているとされています。
- 労務費(賃金の原資)の 相場が分かりづらい
- 材料費よりも削減が容易
- 技能者の処遇を考慮せず安価に請け負う業者が競争上有利
- 過度な重層下請構造のため技能者を雇用する下請業者まで適切に確保されづらい
これを改善するために、労働者の処遇確保を努力義務化するとともに、中央建設業審議会が「適正な労務費の基準」を作成し、これを著しく下回る見積もり・契約締結を禁止することとなりました。
※ 詳細は『【2024/9/17-20】労務費の基準について議論を開始。中央建設業審議会が労務費の基準に関するワーキンググループを開催』記事をご参照ください。
第2回目のワーキンググループでは、今後、職種別に労務費の基準を検討するための意見交換を開始するにあたって、最低限必要と想定される2つの論点について議論いたしました。
1.労務費の基準の実効性確保について
労務費の基準の実効性確保において、以下の点が必要であると明文化されました。
- 労務費を適正水準で各契約段階(発注者→元請→下請→技能者)に行き渡らせる仕組みが必要
- 労務費の積算を、下流から上流に向けて行うアプローチが求められる
これらを実現していくためには、以下のようなことが現状の課題として挙げられております。
- 労務費の見積額が不明確で、適正な水準かどうか判断しづらい
- 処遇改善に取り組む企業が競争で不利になる
- 労務費が技能者に適切に行き渡っているか確認が難しい
今後の取り組みの方向性として、以下のような案も出されました。
- 労務費・必要経費が明示された見積書を推進し、業界団体の支援を受ける
- 処遇改善に取り組む企業が不利にならないような環境整備
- 適正な労務費・賃金支払いを契約で担保する試み
- 技能者への賃金支払い状況が確認できる仕組みの構築
これらの取り組みは、現状の課題を考慮し、関係者各所と認識を合わせながら、実施可能な取り組みから進めていくようです。
- 詳細資料
2.労務費の基準の作成について
労務費の基準作成にあたって考慮すべき事項として、以下の3つから検討がなされました。
- 「労働費の基準」の計算方法
- 「労働費の基準」の作成単位
- 「労働費の基準」の改定
これらの項目ごとの基本方針、暫定方針、論点を確認したようです。
例としては、労務費は「労務単価 × 歩掛」で計算され、単位施工量あたりの労務費として示すことや、労務費の基準は細分化を最小限に留め、規格や仕様ごとに基準を作成しないこと、労務費の基準の改定は、基本的に年1回とすることなどが検討されております。
- 詳細資料
3.今後の検討の進め方について
今後のスケジュールは以下の通り計画されております。
次回の開催は12月26日を予定しております。
まとめ
第1回目の議論の中で、すべての職種・工種について同時に議論・作成するのではなく、職種ごとに順次検討を進めていくこととなりました。
今回、第2回目の議論を踏まえ、まずは土木・建築の双方に関係する職種である「鉄筋」と「型枠」について検討を開始し、さらに他の分野と比べて特殊性の高い「住宅分野」の職種についても、基準適用に向けた課題整理が行われていきます。その他の職種についても、順次検討を開始していくこととなります。
今後のワーキンググループでは、職種別の労務費基準の詳細な検討が進められます。
職種ごとに工種や規格の違いがあるため、職種ごとの特徴を踏まえる必要性がある一方、設定を細分化し過ぎると事業者に分かりにくいといったことが生じると考えられます。そこで、職種ごとの適切性を確保しつつ、金額に一定の幅を持たせる等、高度なバランスが必要になってくると考えられます。
建設業界全体の労務費の適正化が進むことで、技能者の処遇改善が実現されることが期待されます。助太刀総研としても、建設事業者の労働実態等を調査・研究していくことで、「建設現場を魅力ある職場に」、労務費の適正化に寄与していければと考えております。
助太刀総研 運営事務局
Sukedachi Research Institute