レポート

【独自調査レポート】協力会社に選ばれる元請企業の「段取り力」

はじめに
ーー協力会社・職人は、現場監督の段取りをどう見ているのか

助太刀総研では、建設業に従事する経営者、一人親方、個人事業主、会社従業員を対象に、協力会社・職人による元請企業の選別に関する調査を実施した。

第1弾レポートでは、条件が合わない元請企業からの依頼を「時々ある」以上の頻度で断る回答者が47.9%にのぼることを明らかにした。協力会社・職人は、提示された依頼を一律に受けるのではなく、単価、工期、支払い条件、現場環境、取引先との関係性などを踏まえ、案件や元請企業を選別する場面が生じていることがうかがえた。

依頼を断る理由として最も多かったのは低単価だった。一方で、工期スケジュールの厳しさ、支払い条件、担当者の段取り・態度も、依頼を断る理由として挙げられた。

また、元請企業に対して最も変えてほしい不満として、「現場監督の経験不足・段取り不足」が最も多く選ばれた。

本レポートでは、この結果を起点に、段取り不足への不満がどのような回答者に多く見られるのか、請負階層や職種によって違いがあるのか、また利益への影響や依頼を断る理由とどのように併存しているのかを整理する。


調査概要

基本情報

  • 調査対象:建設業に従事する経営者、一人親方、個人事業主、会社従業員
  • 有効回答数:292件
  • 調査期間:2026年4月25日 ~ 2026年6月14日
  • 調査方法: 「助太刀」アプリ内におけるアンケート調査

※本調査では、回答者が日常的に取引または就業する発注元・上位企業を念頭に回答を得ています。本文中では、便宜上これらを総称して「元請企業」「元請け」と表記しています。
※設問により回答対象者は異なる。例えば取引条件や元請企業の選定に関する一部の設問は、元請企業や会社従業員を除く経営者、一人親方、個人事業主を対象としている。
※本調査は主に「助太刀」アプリ利用者を対象としたアンケートであり、建設業界全体の構成比や意識を直接的に代表するものではない。調査結果は、回答者の認識および経験に基づく傾向として解釈している。

本調査の回答者構成

はじめに、本調査に回答した建設業従事者の構成を確認する。以下の図1〜図4では、回答者の年齢、建設業の従事年数、雇用形態、現場入場時の請負階層を示す。

本調査には、現場経験を有する中堅・ベテラン層を中心に、一人親方、個人事業主、法人経営者、会社従業員など、多様な立場の建設業従事者から回答が寄せられた。

※以下の構成比は本調査の回答者構成を示すものであり、建設業界全体の就業者構成を表すものではない。


元請に最も変えてほしいことは、「現場監督の経験不足・段取り不足」

元請企業に対して、「これだけは変えてほしい」と思う最大の不満を一つ選んでもらったところ、最も多かったのは「現場監督の経験不足・段取り不足」で37.3%だった。

次いで、「不透明な見積り減額」が26.0%、「高圧的なコミュニケーション」が18.8%、「過剰な書類提出」が10.3%、「サービス残業・休日出勤の強要」が7.5%だった。

一位の「現場監督の経験不足・段取り不足」を掘り下げる前に、回答者の4人に1人以上が最大の不満として挙げた二位の「不透明な見積り減額」(26.0%)に触れておきたい。

建設業法では、取引上の地位を不当に利用し、通常必要と認められる原価に満たない請負代金で契約を締結することが禁止されている。また、十分な協議を行わずに請負代金を一方的に決定する指値発注や、工事着手後に協議なく請負代金を一方的に決定する行為などは、建設業法違反となるおそれがある行為例として示されている。(※)出所:国土交通省「建設業法令遵守ガイドライン」

本調査からは、見積りや金額変更の過程に納得できないと感じる回答者が一定数いることがうかがえる。元請企業にとっては、見積りの決定や金額変更の際に、根拠を丁寧に説明し、協力会社・職人と認識をすり合わせることが、信頼関係を維持するうえで重要となる。

その「不透明な見積り減額」を11.3ポイント上回り、最大の不満としてトップに立ったのが「現場監督の経験不足・段取り不足」だった。見積りや金額変更に関する不満に加え、日々の現場運営も、協力会社・職人が元請企業に対して最も改善を求める要素となっていることがうかがえる。

では、この「現場監督の経験不足・段取り不足」への不満は、現場経験を長く積んだベテラン層に強く見られるのだろうか。


段取り不足への不満は、ベテラン層特有のものなのか

現場経験を長く積んだベテラン層ほど施工順序や工程調整、現場運営の適切さを見極める高い水準の視点を持っている可能性がある。そのため、現場監督の経験不足や段取り不足を、より課題として捉えやすいのではないかーー?

この仮説から、建設業の従事年数別に、元請企業に対して最も変えてほしい点を「現場監督の経験不足・段取り不足」と挙げた割合を比較した。

その結果、従事年数3〜10年では、「現場監督の経験不足・段取り不足」を最大の不満に挙げた割合が25.0%〜30.8%(約3割)だったのに対し、11年以上では39.3%〜44.4%(約4割)だった。

経験を重ねた層で相対的に高い傾向は見られるものの、従事年数が短い層でも約3割が同項目を選択している。また、経験年数が長くなるほど割合が一貫して上昇する形は見られなかった。なお、本調査は回答者側の従事年数を把握したものであり、現場監督側の属性や年齢、現場規模等との相関までは言及していない点には留意したい。

この結果から、現場監督の経験や工程調整に関する不満は、特定の経験層に限られたものではなく、幅広い協力会社・職人に共通する課題として認識されていることがうかがえる。

では、現場監督の経験不足や段取り不足への不満は、請負階層によって異なるのだろうか。

重層的な請負構造では、上位企業で生じた工期や予算上の制約が、下位層に向かうほど工程上のしわ寄せとして表れる可能性がある。現場入場時の請負階層別に、「現場監督の経験不足・段取り不足」を最大の不満として挙げた割合を比較した。


請負階層の下位層ほど段取り不足に対する不満が高いとは限らない

国土交通省の建設業法令遵守ガイドライン(※)では、「重層下請構造全体の中で著しく短い工期による請負契約の締結が連鎖的に行われることで、技能労働者の労働時間などへの影響が懸念される」と指摘されている。

契約上の立場が低くなる下位層ほど、上位企業の段取り不足や急な変更による不利益を直接被りやすいと考えられるためだ。

下請負人が、自ら著しく短い期間を工期とする請負契約を締結し、さらにその下請負人から再下請が行われた場合、再下請負人にも著しく短い工期による工事を求める蓋然性が高くなり、建設業の重層下請構造全体の中で著しく短い工期による請負契約の締結が連鎖的に行われることで、技能労働者の労働時間などへの影響が懸念される。

出典:建設業法令遵守ガイドライン(第12版) ,国土交通省不動産・建設経済局建設業課(https://www.mlit.go.jp/report/press/sogo13_hh_000023.html)
WEBページ名「工期面での下請へのしわ寄せの防止-建設業法令遵守ガイドラインの改訂-」

そこで現場での請負階層別に、「現場監督の経験不足・段取り不足」を最大の不満として挙げた割合を比較した。

請負階層別に見ると、1次請けでは46.8%が「現場監督の経験不足・段取り不足」を最大の不満に挙げた。2次請けは34.8%、3次請けは35.9%だった。

下位層ほど不満が高いという仮説に対し、実際の調査結果を見ると、請負階層が下がるほど不満が一貫して高まるという傾向は見られなかった。2次請け(34.8%)や3次請け(35.9%)はいずれも3割半ばと同水準であり、階層を問わず全体的に段取り不足への不満が広く浸透している実態がうかがえる。

むしろ不満率が最も高かったのは、下位層ではなく1次請け(46.8%)だった。これは、元請企業の監督の段取り不足に対して、現場調整や下位企業への指示出しを一手に引き受ける1次請けが、直接的な板挟みの負担を最も受けやすいためと考えられる。 (※元請企業が2次請け以下へ直接指示を出す行為は「偽装請負」のリスクがあるため、1次請けが調整役を担わざるを得ない構造や、近年の時間外労働上限規制による工期圧迫も影響していると推測される。)

請負階層に続いて、次に工事工程ごとの違いに目を向けたい。


仕上げ専業で高い、段取り不足への不満

ここでは、先行工程の遅れなどのしわ寄せを直接受けやすい「後工程」の職種ほど、段取り不足への不満が強いのではないかという視点から結果を比較する。

本分析では、回答者が選択した詳細職種をもとに、躯体専業、設備専業、仕上げ専業の3群に分類した。複数の大分類にまたがる回答者や、比較対象外の職種は分析対象から除外している。

「現場監督の経験不足・段取り不足」を元請企業に対して最も変えてほしい不満として挙げた割合は、躯体専業で20.0%、設備専業で32.4%、仕上げ専業で46.8%だった。

比較した3職種群では、躯体専業、設備専業、仕上げ専業の順に、段取り不足を最大の不満に挙げる割合が高かった。この並びは、工程上の位置が相対的に後ろになる職種ほど、先行工程や現場全体の段取りの影響を受けやすいという見方と整合的である。

ここまでは元請企業の段取り不足への不満がどの属性に強く見られるかを幅広く確認し、従事年数には大きな偏りはなかったこと、請負階層別では一次請けが、工程別には仕上げ工程の協力会社や職人が不満を示す傾向が強くなることがわかった。

以降は、こうした段取り不足は利益にどの程度影響する問題として協力会社や職人に認識されているのかを調べていく。


段取り不足や急な仕様変更は、程度の差こそあれ約7割の協力会社・職人の利益を圧迫している

元請企業の段取り不足や急な仕様変更によって、自社の利益がどの程度削られることがあると感じるかを尋ねた。

集計の結果、何らかの利益減少を感じている回答者は全体の66.4%(約7割)に達した。その内訳を見ると「1割程度(35.1%)」と「2〜3割程度(27.5%)」が大部分(計62.6%)を占めており、「5割以上(赤字に近い)」という回答も3.8%存在した。(「ほとんどない」は33.6%)

段取り不足や急な仕様変更は、回答者にとって元請企業への改善要望にとどまらず、自社の利益に関わる問題として認識されている。

一方でこれは、元請企業にとって、工賃・単価だけでなく、現場監督の育成や事前の段取り、円滑な現場運営を改善することによっても、協力会社の収益性を支えられる可能性を示している。こうした「仕事のしやすさ」を高めることも、協力会社から選ばれる元請となるための重要な要素といえる。

では、こうした「利益を削られるほどの現場監督の経験不足・段取り不足」に直面した際、協力会社・職人はどのような行動に出るのだろうか。ここからは、段取りや担当者の対応の悪さを理由に、元請企業からの依頼そのものを「断る」という判断に踏み切っている実態を見ていく。


約3割が「担当者の段取り・態度」を理由に依頼を断ると回答

元請企業からの依頼を断る理由を複数回答で尋ねた。

依頼を断る理由として最も多かったのは「単価(労務費)が低い(82.8%)」であり、金銭条件が仕事を受けるか否かの最大の判断基準であることは明白である。

しかし見逃せないのは、単価に次ぐ理由として「工期スケジュールがタイト(38.1%)」「支払い条件が悪い(34.8%)」と並び、「担当者の段取り・態度が悪い」が30.7%に上っている点だ。つまり、約3割の協力会社・職人が金額条件だけでなく「現場監督の対応や段取りの悪さ」そのものを理由に仕事の依頼を断っている実態が浮き彫りとなった。

なお、最も回答率が高かった「単価」をめぐる構造的な課題やその背景については、第1弾レポートにて詳細なデータ分析と考察を行っているため、ぜひ併せてご参照いただきたい。

以降の分析では、この「担当者の段取り・態度が悪い」を理由に依頼を断った回答者に焦点を当てて検証を進める。

現場監督の対応を理由に仕事の依頼を拒否するほどの回答者は、段取り不足や急な仕様変更による自社の利益減少についても、より深刻な実害として捉えているのだろうか。


段取り・態度を理由に断る層では、約7.5割が利益減少を実感

「担当者の段取り・態度が悪い」を理由に依頼を断る層(n=70)と、そうでない層(n=192)で、利益減少の認識を比較した。

1割以上の利益減少を感じている割合は、担当者の段取り・態度を断りの理由に挙げていない層の63.5%に対し、理由に挙げた層では74.3%と約10ポイント高くなった。

また、理由に挙げた層では、1割程度の減少にとどまらず「2〜3割程度の利益減少」という大きな打撃を感じている回答者の割合がより顕著に高くなっている。単に利益が減っているという事実だけでなく、その「実害の重さ(減益率の大きさ)」が、協力会社にとって「この元請からの依頼は断る」という判断に関連している可能性がある。

これまでの分析で明らかになった通り、「現場監督の段取り不足や不誠実な対応」は、職人の不満を高めるだけでなく、協力会社の利益を直接圧迫し、最終的には「元請からの依頼を断る」理由の一つとして現れている。

単価や工期といった条件面だけでなく、「現場管理の質」そのものが取引継続の鍵を握る中で、これからの時代に職人から「選ばれ続ける元請企業」であり続けるためには、元請企業には何が求められているのだろうか。


職人・協力会社に選ばれる元請企業に必要なこと
ーー単価に加え、対等な関係性と段取り力も問われる

今後、「職人に選ばれる元請企業」になるために最も必要なことを尋ねた。

最も多く挙げられたのは「更なる単価アップ(40.7%)」であった。第1弾レポートでも分析した通り、適正な金銭条件が取引の前提であることは揺るぎない事実である。

注目すべきは「対等なパートナーシップへの意識転換(30.7%)」と「圧倒的な現場段取り力(17.9%)」を合わせた「現場の関わり方・管理の質」を求める声が全体の約半数(48.6%)に達し、単価アップを上回る点である。

協力会社や職人たちは単に高い単価だけを求めているのではない。対等な姿勢でリスペクトを示し、現場でのムダやストレスを生ませない「段取り力」を備えた元請企業こそが、最終的に選ばれ続ける実態が鮮明となった。

これまでの分析結果を踏まえ、本調査全体から得られたビジネス上の示唆を整理する。


協力会社・職人に選ばれる元請企業へ

本調査の一連のデータは、現場監督の「段取り不足」が単なる現場のストレスにとどまらず、協力会社・職人の利益を圧迫し、さらには元請企業からの依頼を断る判断にもつながり得ることを浮き彫りにしている。

特に、1次請けや後工程(仕上げ専業)など、現場全体の調整を担う立場や、先行工程・スケジュールの影響を受けやすい職種ほどこの傾向は強く、単価などの取引条件と並び、現場管理の質が重視されていることがうかがえる。

一方で、これは元請企業にとって、金銭条件だけが協力会社・職人から「選ばれる」ための手段ではないことも示している。現場監督の段取り力を高めることや、協力会社と対等な関係を築き、仕事を進めやすい環境を整えることも、協力会社が利益を確保しやすい施工環境をつくり、継続的な取引につながる重要な要素となり得る。

単価や支払い条件の改善に加え、日々の現場運営の質を高めることにも、協力会社・職人から継続的に選ばれる元請企業になるための改善余地があると言える。


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