労務費の適正化を目指して:第3回労務費の基準に関するワーキンググループでの議論と今後の展望
目次
国土交通省の中央建設業審議会は、2024年12月26日に「第3回労務費の基準に関するワーキンググループ」を開催しました。
※「労務費の基準に関するワーキンググループ」は改正建設業法(令和6年9月施工)の内容を踏まえ、建設工事の労務費に関する基準作成を目的としております。
当日の配布資料についても公開がされています。
第3回労務費の基準に関するワーキンググループ 配付資料
当日のアジェンダは以下となります。
①実効性確保に向けた具体策(契約時の適正な労務費確保)について
②受注者団体等の委員からの発表
③職種別意見交換の実施状況について
それぞれ資料を引用しながら解説していきます。
<これまでの議論内容(第1、2回ワーキンググループの内容)>
※詳細については過去の記事をご参照ください。
・第1回 労務費の基準に関するワーキンググループについて
・第2回 労務費の基準に関するワーキンググループについて
第3回目のワーキンググループ以降では、「各契約段階で適正水準の労務費を確保するための取り組み」「適正水準の労務費を下請けに、賃金を技能者にまでそれぞれ行き渡らせるための取り組み」の二つの方向性から、標準労務費の実効性確保策を検討することにしている。また、二つの方向性に共通する「公共工事の特性を踏まえた対応」も合わせて議論するとしました。
1.実効性確保に向けた具体策(契約時の適正な労務費確保)について
運用方針の基本的な考え方として、15の方針案を示しました。
今後、具体的な対応について議論を深め、2025年12月までの施行に当たって国がガイドラインを定めていくことになっております。
15の方針案の中で、①「標準的な条件」や「標準的な歩掛」以外で施工する場合の見積もり方法についての論点が挙げられました。
標準労務費は「公共工事設計労務単価×標準的な歩掛かり」の計算式が前提とされているが、実際の契約では現場ごとに施工条件を考慮して労務費を調整する必要があるとの見解が示されました。
例えば‥
施工条件が悪い現場(小ロットの工事など)は標準労務費より高い労務費が適正
施工条件が良い現場(大ロットの工事など)は標準労務費より低い労務費が適正
また、機械導入などで生産性を高めて、低い労務費で見積もりを行うことは認められるとした。
ただし、注文者や建設Gメンに対し、その歩掛で施工可能な理由を説明できるようにする必要があることを留意事項として挙げました。(注)
(注)労務単価を引き下げて労務費を低く見積もることは、2025年12月ごろを予定する改正建設業法第3弾施行の「著しく低い労務費等による見積もり提出・見積もり変更依頼の禁止」で違反になる恐れがあり、引き上げ幅によっては明確に違反と判断するとした。
一方、歩掛を悪くして作業に当たる人数を増やせば、労務単価を引き下げても、標準労務費と同額以上の労務費を算出できるが、適法と捉えるかは定まっていないとのことである。
2.受注者団体等の委員からの発表
建設業団体から、技能者の処遇改善に向けた方策の要望がそれぞれ挙げられました。
・日本建設業連合会 :CCUSレベル別に応じた賃金支払いの仕組み構築の提案
・全国建設業協会 :Gメン通報制度(岡山県建設業協会)の好事例紹介
・建設産業専門団体連合会:外国人労働者の処遇改善
・住宅生産団体連合会 :見積書の作成フォームやソフト導入の推進
・全国建設労働組合総連合:フリーランス新法と併せた契約等の推進
3.職種別意見交換の実施状況について
現状の職種別意見交換の状況について、報告されました。
<状況>
・ 第2回ワーキンググループ以降、鉄筋、型枠、住宅分野それぞれについて、職種別意見交換を開始
【共通】日本建設業連合会、全国建設業協会、全国中小建設業協会、建設産業専門団体連合会、
【鉄筋】全国鉄筋工事業協会、全国圧接業協同組合連合会
【型枠】日本型枠工事業協会、
【住宅】住宅生産団体連合会、全国建設労働組合総連合、全国住宅産業地域活性化協議会、全国工務店協会
・これまでのワーキンググループで示された「労務費の基準」の基本方針について、確認するとともに、
①労務費の基準(素案)の作成
②労務費の基準の実効性の確保 に分けて議論を開始
<今後のスケジュールについて>
今後のスケジュールは以下の通り計画されております。
次回の開催は2月頃を予定しております。
<まとめ>
第1、2回のワーキンググループを踏まえて、第3回ではより具体的な検討が進められました。建設業団体からの要望や職種別の意見交換も実施され、2025年の12月ごろを予定とされている勧告に向けて進捗したと思われます。
今後はより具体策の議論が予定されているので、労務費の適正化が進み、技能者の処遇改善が実現され、建設業界の追い風になることを期待しております。引き続き、助太刀総研では、建設事業者の労働実態等を調査・研究していき、「建設現場を魅力ある職場に」、労務費の適正化に寄与していければと考えております。
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Sukedachi Research Institute