レポート

【独自調査レポート】「単価の次」に何を求めるか ―― 地域・請負階層・立場で異なる、協力会社に選ばれる条件

はじめに:立場によって、選別の条件はどう変わるのか

これまで、建設業に従事する経営者、一人親方、個人事業主、会社従業員を対象に、元請企業の選別に関するアンケート調査を実施し、その結果をシリーズで紹介してきた。

第1弾では、約2人に1人が条件の合わない元請企業からの依頼を「時々ある」以上の頻度で断っていることを示した。
第1弾レポート全文はこちら:https://souken.suke-dachi.jp/blog/report_20260807

第2弾では、現場監督の段取り不足が最大の不満であり、利益への影響や選別行動とも結び付いていることを示した。
第2弾レポート全文はこちら:https://souken.suke-dachi.jp/blog/report_20260930

協力会社や職人と一口にいっても、働く地域、請負階層、事業の立場はさまざまである。
最終回となる本レポートでは、回答者を地域・請負階層・立場の3つの軸で分け、元請企業を選ぶ基準の何が共通し、何が違うのかを比較する。


調査概要

  • 調査対象:建設業に従事する経営者、一人親方、個人事業主、会社従業員
  • 有効回答数:292件
  • 調査期間:2026年4月25日~2026年6月14日
  • 調査方法:「助太刀」アプリ内におけるアンケート調査

比較に用いた3つの軸の区分は次のとおり。

  • 地域:
    • 関東(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県、茨城県、栃木県、群馬県)143件
    • 関西(大阪府、兵庫県、京都府、奈良県、滋賀県)67件
    • その他の地域80件は地域比較から除外
  • 請負階層:
    • 1次76件、2次131件、3次以下74件。
    • 元請9件は件数が少ないため階層比較から除き、4次以下は3次と合算
  • 立場:一人親方119件、個人事業主(従業員有)56件、法人経営者87件(従業員有り法人、法人かつ一人社長)、会社従業員28件(参考値)

前提:どの層でも約半数が元請を選別し、最大の理由は「単価」である

まず、条件が合わない元請企業からの依頼を断る頻度を、3つの軸で比較した。

「時々ある」「よくある」「頻繁にある」と回答した人は第1弾レポートでも触れた通り、全体で47.6%となった。

地域別では関東48.3% - 関西52.2%、請負階層別では1次47.4% - 2次48.9% - 3次以下45.9%、立場別では一人親方47.9% - 個人事業主(従業員有)57.1% - 法人経営者39.1%となり、いずれの軸でも統計的な差は確認されなかった。

次に、依頼を断ったことがある人に、その判断に至った主な理由を尋ねた。「単価(労務費)が低い」を挙げた人は全体で82.4%となり、地域、請負階層、立場のどの層でも8割前後で最も多かった。

少なくとも本調査の回答者においては、条件に応じて元請企業を選別する行動と、その最大の判断材料が単価であることは、地域や立場を問わず共通している。違いが表れるのは、単価の次に何を求めるかという部分である。

では、単価の次に何を求めるのだろうか。まず地域で比較する。その前提として、関東・関西の回答者の年収構成を確認する。


関東と関西では、単価の次に求めるものの差があるのか

前置き:本調査においては、関東・関西で年収構成は変わらない

地域による違いを見る前に、関東・関西の回答者の年収構成を比べた。
年収構成に違いがあれば、その後に見る地域差が年収の違いによるものである可能性があるためである。

関東・関西ともに「600万円以上〜800万円未満」が最も多く(関東28.0%、関西29.9%)、600万円以上の割合も関東56.6%、関西59.7%とほぼ同じだった。年収構成に統計的な差はみられなかった。

以降で見る地域差は、回答者の年収構成の違いによるものとは考えにくい。では、年収構成が同じなかで、関東・関西の回答者は元請企業に何を求めているのだろうか。


関西では、現場での接し方や環境への声が相対的に強い

「職人に選ばれる元請企業」になるために最も必要なことを尋ねたところ、関東・関西ともに「更なる単価アップ」が最も多く、関東で46.9%、関西で34.3%となった。

一方、「福利厚生・現場環境の改善」は関西で17.9%となり、関東の6.3%を11.6ポイント上回った。

図2で触れた通り、年収構成に全体として差はみられなかったものの、福利厚生や現場環境への関心は年収によって異なる可能性もある。

そこで、回答者を年収600万円未満と600万円以上の2つに分け、それぞれの年収帯の中で、「職人に選ばれる元請企業」になるために最も必要なこととして「福利厚生・現場環境の改善」を挙げた人の割合を、関東と関西で比べた。

その結果、600万円未満では関東が8.1%と関西が18.5%、600万円以上では関東が4.9%と関西が17.5%となり、どちらの年収帯でも関西が上回った。
(※ただし600万円未満の関西は27人と少ないため参考値として扱う。)

つまり、関西で「福利厚生・現場環境の改善」を求める声が多いのは、関西の回答者に年収の低い人が多いからではなく、同じ年収帯どうしで比べても見られる地域の特徴だと考えられる。

次に質問を変え、「元請企業に”これだけは変えてほしい”と思う不満」を問うと、「現場監督の経験不足・段取り不足」が関東42.0%、関西35.8%と両地域で最も多かった。段取り不足への不満は地域を問わず共通する課題といえる。

一方、「高圧的なコミュニケーション」は関西で26.9%となり、関東の16.1%を10.8ポイント上回った。また、現場で高圧的な態度・言葉遣いがあった場合に取引の中止に傾く人は関東で70.6%となり、関西の55.2%を15.4ポイント上回った。

関東では高圧的な元請企業との取引をやめる判断をする人が多く、関西では取引を続けながら不満として抱えている人が多い可能性がある。

少なくとも本調査の回答者においては、関西では、元請企業の現場での接し方や現場環境に対する声が、関東よりも相対的に強い傾向がうかがえる。

さて、地域に続いて、重層構造のどこで仕事を受けているかによって、元請企業との関係はどう変わるのだろうか。次に、請負階層別に見ていく。


請負階層にみる、元請企業との関係

請負階層の3次以下の半数が「単価の相談ができない」と回答

経営者・個人事業主・一人親方に、元請企業から物価高騰などに伴う労務費(単価)引き上げの提案や相談があったかを尋ねた。

1次では「先方から提案があった」(21.5%)と「相談して応じてくれた」(44.6%)を合わせて66.2%となった一方、3次以下では32.9%にとどまった。

3次以下では「相談できる環境ではない」が50.0%、「拒否された」が17.1%となった。

本調査の回答者においては、重層構造の下の階層ほど、労務費の引き上げについて元請企業と話し合える場面が限られていることがうかがえる。では、単価の相談がしにくい階層では、「選ばれる元請企業」に求める条件も違うのだろうか。

3次以下ほど、選ばれる元請の条件に「単価」を挙げる

「職人に選ばれる元請企業」になるために最も必要なことを請負階層別に見ると、3次以下では「更なる単価アップ」が58.1%となり、1次の34.2%を23.9ポイント上回った。

一方、「対等なパートナーシップの意識転換」は2次で38.2%と最も多く、3次以下では16.2%にとどまった。

単価について相談しにくい階層ほど、選ばれる元請企業の条件として単価そのものを挙げる傾向がみられる結果となった。

最後に、一人親方、従業員を抱える個人事業主、法人経営者といった立場の違いでは、何が変わるのかを見ていく。


立場別に見る、元請企業や制度に求めるもの

元請企業に対して単価以外で重視するものは、立場によって違う

元請企業を選ぶ際に「単価」以外で最も重視する要素を立場別に見ると、一人親方では「現場監督の段取りの良さ」が26.9%、個人事業主(従業員有)では「支払いサイトの早さ(入金までの期間)」が37.5%、法人経営者では「価格交渉への柔軟な対応」が28.7%で、それぞれ最も多かった。

依頼を断る理由として「支払条件が悪い」を挙げた人は、依頼を断ったことがある人の34.0%だった。元請企業選びで「支払いサイトの早さ」を最も重視する人に限ると57.9%となり、それ以外の人の25.3%を32.6ポイント上回った。

人件費や材料費を立て替えて施工する協力会社にとって、入金までの期間は受注判断を左右する条件の一つになっていると考えられる。

従業員を抱える個人事業主で入金の早さを重視する割合が高いことは、資金繰りの負担の大きさを示している可能性がある。

この、立場による違いは、働き方をめぐる制度の受け止め方にも表れているのだろうか。

週休2日制、法人経営者は「人材確保」の観点で受け止める

「週休2日制」について、経営・事業運営の観点からの評価を尋ねた。法人経営者では「人材確保に不可欠なので歓迎」が23.0%となり、一人親方の10.9%を12.1ポイント上回った。

一方、一人親方では「休みを増やすより現場の稼働(売上)を優先したい」が39.5%で最も多かった。

人を雇って事業を回す立場では人材確保の手段として、自ら現場に立つ立場では収入に直結する稼働日の問題として、週休2日制が受け止められていることがうかがえる。

地域、請負階層、立場によって、元請企業に求めるものは異なる。そのなかで、元請企業の姿勢への評価を分けるものは何だろうか。


相談できる関係が、元請の姿勢への評価を分ける

5年前と比べて、元請企業の「協力会社を大切にする姿勢」が良くなったと感じるかを、労務費の相談状況別に比べた。

「良くなった」(4・5と回答)は、「先方から提案があった」人で48.6%、「相談して応じてくれた」人で39.2%となった一方、「相談できる環境ではない」人では19.6%、「拒否された」人では16.7%にとどまった。

本分析は因果関係を示すものではないが、少なくとも本調査の回答者においては、単価をめぐって元請企業と話し合える関係があるかどうかが、元請企業の姿勢への評価と結び付いていることがうかがえる。


おわりに:「単価の次」を整えることが、選ばれる元請への分かれ目

本調査では、地域、請負階層、立場のいずれで分けても、約半数が条件に応じて元請企業を選別しており、断る最大の理由は単価だった。一方、単価の次に求めるものは層によって異なる。

関西では現場での接し方や現場環境への声が相対的に強い。一方、関東では高圧的な態度があった場合に取引の中止に傾く人が7割にのぼり、関西より多い。3次以下では労務費について相談できる環境が限られ、単価アップを求める声が強い。

立場別では、一人親方は段取り、従業員を抱える個人事業主は入金の早さ、法人経営者は価格交渉の柔軟さや人材確保を重視する傾向がみられた。また、単価について話し合える関係があるかどうかが、元請企業の姿勢への評価とも結び付いていた。

これらは異なる設問・異なる比較に基づく結果であり、因果関係を示すものではない。しかし、適正な単価を前提としたうえで、相手の地域、階層、立場に応じて何を整えるかが、協力会社・職人から「次もこの会社と仕事をしたい」と思われるかどうかの分かれ目になっている。


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  1. (例1)出所:助太刀総合研究所 【2023年度】助太刀総研 建設業実態調査結果について
  2. (例2)【2023年度】助太刀総研 建設業実態調査結果について
  3. (例3)助太刀