労務費の適正確保に向けた契約・支払いのあり方 -第5回労務費の基準に関するWG -

国土交通省の中央建設業審議会は、2025年3月5日に「第5回 労務費の基準に関するワーキンググループ(以下、WG)」を開催しました。
※「労務費の基準に関するWG」は改正建設業法(令和6年9月施工)の内容を踏まえ、建設工事の労務費に関する基準作成を目的としております。
議論内容をそれぞれ解説していきます。当日の配布資料についても公開がされています。
※配布資料:第5回労務費の基準に関するWG 配付資料
当日のアジェンダは以下となります。
(1)契約段階における実効性確保について
(2)労務費・賃金の支払いに係る実効性確保について
<これまでの議論内容(第1〜4回WGの内容)>
※詳細については過去の記事をご参照ください。
・第1回 労務費の基準に関するWGについて
・第2回 労務費の基準に関するWGについて
・第3回 労務費の基準に関するWGについて
・第4回 労務費の基準に関するWGについて
今回のWGでは、「契約段階における実効性確保」及び「労務費・賃金の支払いに係る実効性確保」 について、これまでの議論を踏まえて、各4つずつの計8つの論点を提示し、そぞれの方針についての議論が行われました。
⒈契約段階における実効性確保について
それぞれの論点とそれに対する方針と主な意見についてまとめました。

論点1〜4では、労務費の見積や契約、支払いの在り方について、主に現場で直面する課題を踏まえながら、具体的なルールや仕組みについて議論が行われました。
例えば、契約時と完工時で労務費が異なる場合の取扱い、極端な値引きやダンピングの防止策、見積書における労務費や必要経費の内訳明示の推進、さらには社会保険料などの必要経費の数値化・参考値の公表などが主な話題となっています。
これらを通して、事業者間の公平性や透明性を高め、健全な契約慣行や技能労働者の処遇改善につなげるための方策について、幅広い観点から活発な意見交換が行われていたことがうかがえます。
⒉労務費・賃金の支払いに係る実効性確保について
それぞれの論点とそれに対する方針と主な意見についてまとめました。

論点5〜8では、労務費の適正な支払いを担保するための、実務上の運用や確認方法について幅広く議論されました。
具体的には、国や自治体だけでは十分に対応できない賃金支払いの確認について、建設業者団体等による自主的な取組の必要性やその方法が話題となったほか、契約時に適正な給与支払いを約束する「コミットメント制度」の導入、発注者が担うべき責務の範囲、さらには賃金台帳や作業日報などを活用した具体的な確認方法など、現場実態に即した対応策について意見が交わされています。
また、悪質な業者への対応や優良事業者へのインセンティブ付与、個人情報や一人親方への配慮といった、運用面での課題や注意点についても議論が行われました。
<まとめ>
今回のワーキンググループでは、特に契約段階での労務費確保、「入り口」対策に関する論点が整理され、標準見積書の作成や内訳明示、サプライチェーン全体での意見交換の場の設置など、適切な契約慣行の定着を重視する方針が示されました。加えて、必要経費の参考値の公表、見積書の電子化や中小企業への支援策も提案されており、公平で透明性の高い見積・契約プロセスの普及が期待されています。
一方、実際に労務費や賃金の支払いを確実にする「出口」対策については、受発注現場の事情や各関係者の立場の違いから、委員間で見解の違いもあり、引き続き継続的な検討が必要とされています。
今後、こうした議論や施策がどのように実務へ反映され、実際の契約や現場における労務費支払いの改善にどのようにつながるのかが、建設業界の持続的な発展を左右する重要なポイントになると考えられます。

助太刀総研 運営事務局
Sukedachi Research Institute